青の葉の、向かう明日。
「清澄くん、ありがとう。あたしのこと助けて、ちゃんと叱ってくれて。あたし、がんばるから。生きることを諦めないから。ただ今はちょっとエネルギーが足りないから、もう少し待っててほしい。そうしたらちゃんと地に足つけて生きるから」

「…頑張らなくていいよ」


清澄くんはそう言った。

丸椅子に腰掛け、あたしとほぼ同じ目線になる。

視線が交わり、鼓動が早鐘を打つ。

医療ドラマでよく見る心拍数を測る機械が装着されているからあたしに異常があれば目に見えて分かってしまう。

だからって冷静になれと言われても今は無理だし、時が過ぎ去るのを待つしかない。


「深沢」

「はい」


視線を逸らせばなんか言われそうだから、あたしは瞬きも出来ず、彼の鼻筋を見つめながら耳を研ぎ澄ます。


「君は君のままでいい。背伸びしても遠くの星に手が届かないじゃん。無理なものは無理って諦める…というよりは他の人に譲るって思えばいいか。自分の不得意が誰かの得意だったら、誰かにやってもらった方が正確だし、自分もラクでしょ?君はひとりじゃない。誰かに頼っていいんだ」

「そう、だね。今のところあたしの味方は家族だけだけど、あたしは一人じゃない。一人じゃないって暗示かける。そしたら歩けるようになる」

「うん。それがいい。あと、家族以外にもちゃんと味方はいる。…有、だ。有はずっと明の心配をしてる。だから、仲直りしてほしい。ちゃんと話し合ってもう一度友達を始めて欲しい」


それが清澄朔の願い、か。

自分の大切な人には笑っていてほしいもんね、

幸せでいてほしいもんね。

あたしが有とのわだかまりを解消して有が本当の笑顔を見せてくれたら、きっと君も笑ってくれるよね?

なら、あたし君に黙ってちょっとだけ頑張る。

だから待ってて。

あたし、有のこと笑顔にするから、

必ず。

あたしは彼の前に小指を突き出した。


「約束してほしい。あたしが逃げないように」

「分かった」


あたしより長い彼の小指が絡む。

胸がとくんと鳴るのを振り払って私は言葉を紡いだ。


「あたしが有と仲直りしなかったら、清澄くんが針千本のーます!指切った!」


これであたしの逃げ場はなくなった。

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