青の葉の、向かう明日。
5

二人で、未来へ

いよいよ卒業式の日がやって来た。

1時間かけて通った学校とも今日でお別れとなる。

式に両親も出席するため、今日は車で送ってもらった。

ほぼ家に引きこもり鬱気味だっま母は、私が無実であることを晴くんが友人とのスマホのやり取りをわざわざ見せて説明したり、私が努力して難関大に合格したことにより心の負担が減ったのかだいぶ症状が柔らぎ、こうして卒業式に出席出来るまでになった。


「じゃあ、また後でね」

「うん」


体育館へと向かう両親と分かれ、逆方向へと歩いていく。

校庭に植えられた桜の木の中には早咲きの河津桜もあり、その一帯はもう見事に咲き誇っていた。

入学したばかりの頃は学校に馴染めるかなぁ、友達出来るかなぁ、勉強についていけるかなぁ、とそんな小さな悩みを抱えてため息をついていたものだけれど、今ではもう立派に成長し、大学受験も無事に終えて卒業の日を迎えられた。

この桜の幹のように強く太く、簡単には折れない心に育ったかな?

まだまだ不安なこともあるし、やり残したこともあるけれど、私前を向いて進んでいくから、どうか見守っていてください。

私は桜の木にお願い事をし、改めて教室へと向かった。

しんみりモードかと思いきや、皆意外にも笑っている。

黒板に自由に絵を描いたり、メッセージを書いたり。

皆思い思いに別れを楽しんでいるように見える。


「おーい!ゆーうー!」


教室中に響く大声で私の名前を呼ぶのは、もちろん彼しかいない。

私はスクバを机の脇にかけるとすぐさま彼を中心とした輪の中に溶け込んだ。

そこからは太陽の恩恵を受け、それを反射してキラキラと輝く生徒一人一人の姿が見えた。

別れを惜しむより楽しまなきゃ。


「ほら、有も書いて。なんでも自由に書いていいから」

「ちょっとぉ、男子ばっかりズルい!有ちゃん、わたしのにも書いて」

「あ!ウチもウチも!」


あっという間に卒業アルバムがカラフルになっていく。

このアルバムを見返す時、今日のこともはっきりと思い出せるように皆とたくさん話して笑っていっぱい彩ろう。

そして最後には、

明ちゃんからもメッセージをもらおう。

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