外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する

8 外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する



 まさに四面楚歌。佐竹、兄の亮太、そして社長とその取り巻きに囲まれている。

「これはどういう事が説明したまえ」

 切り刻まれたビジネスシューズが社長の前に置かれた。
 急遽行われた巡回の目的が自分であるのは承知しており、抱える問題を包み隠さず明かしたのだ。これには佐竹も目を剥く。

「どうして花岡のロッカーからこれが出てきたのか? 社長は聞いているんだ」

 その理由を佐竹がもっとも知りたいだろうに。周囲と足並み揃えて追及する。

「実は昨夜のうちにこちらを発見していました」

「なんですぐ報告しない? 君の報告が遅れたせいで皆が迷惑しているんだぞ? 分かっているのか?」

 俺は朝から顧客宅への訪問があった為、シューズ紛失対応が出来なかった。その間、バックヤードの大捜索、防犯カメラチェック、従業員のロッカーを調べるというタイムロスを発生させてしまう。
 この点に関しては本当に申し訳ない。

「いわば証拠の品を自分で保管したかったんじゃないの?」

 兄貴が口を挟む。部外者である彼がこの場に居る理由はーー

「ドラマ関係者が靴を盗んだって疑いを掛けられてるけど、濡れ衣だったら信用問題に発展するよ? そっちも分かってるよね?」

 仕事仲間へ疑惑を持たれ、腹を立てている様子。基本、他人がどうなろうと興味を示さない兄にしては珍しい行動だ。

「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。佐竹、防犯カメラ映像の解析は?」

 兄へ社長自ら謝罪する。

 経営者トップ、テレビ局を巻き込んだ騒動はどう決着しようと無傷といかないだろう。
< 103 / 116 >

この作品をシェア

pagetop