外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「おや、彼女と親しいのかな?」

 佐竹がすかさず突っ込む。

「いえ、個人的な付き合いはーー」
「あたし、花岡さんが好きで交際したいと考えてました! 今度、食事に行く約束もしてました! だけど花岡さん、全然構ってくれないから」

 俺の言葉に被せ主張する。

「へぇ、痴話喧嘩ってやつ? そんなつまらない理由で客が欲しがってる靴を刻んだり、僕達を巻き込むんだ?」

 兄の嘲笑は俺、佐竹、社長の順で向けられた。

「いえ、彼女とはそのような間柄ではなく」

「しかし、無関係ならば何故このシューズが依頼品と知っている? 花岡が教えたんじゃないのか?」

 佐竹が言う。この話の流れは非常に不味い。

「そんな事はしません!」

 これは佐竹により書かれたシナリオだ。俺に罪をなすりつけ、自分の責任を少しでも軽くしようとしている。

「なぁ、君から真実を話してくれないか? その為にここへ呼ばれたんだ」

 お願いしたが、彼女は不適に笑う。それから俺にだけ聞こえるボリュームで伝えてきた。


「花岡さんがアタシを彼女にしてくれるなら本当の事を話してもいいですよ」

(は? こんな時に何を言い出すんだ?)

 唖然としてしまい、その隙をまたもや突かれる。
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