外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「あんな姿を見られたら繕う意味がないでしょ? これも社会経験だと思って付き合いなさい。ね?」

「社会経験って……今日はプライベートですよね? あんな姿と言ってもリラックスしているだけじゃないですか」

「素のわたしがこんな風で幻滅しちゃった?」

「しません。こういう店は利用した事が無く慣れませんが、先輩と一緒なら楽しいですし」

 環境に順応しようとする振る舞いにニヤニヤしてしまう中、だし巻き玉子が運ばれてきた。

「花岡君ってお箸の持ち方キレイ、食事の仕方もキレイだよね。幼い頃の教育がしっかり行き届いてる感じがする」

「両親が教育熱心でしたので。躾は厳しかったですね」

「ご兄弟はいるの?」

「え?」

 箸をいったん休め、花岡君が顔を上げる。

「あっ、ごめんごめん! アルコールが入ってるからか、いつもなら避けてた話題だしちゃった」

「構いません、兄が1人居ます。それこそ両親の教育方針が合わず、手掴みでものを食べたりしますがね。先輩は?」

「わたしはひとりっ子。ふふっ、何だか今更な自己紹介をしているみたい」

「先輩、俺のフルネーム言えます?」

「もちろん! 花岡一樹君」

「正解です。当然、俺も言えますよ。深山真琴さん」
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