外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「あ、そういえばあの子、深山さんの後輩に擦り寄ってたわ」

 髪が長い方の女性へ話題を流す。

「後輩? 花岡君ですか?」

「たぶん、そう。カシミアのストールを買ってた。でね、あの子ってば彼女用ですか? とか根掘り葉掘り聞いちゃって」

「彼女用……」

「あんな高級品を特別じゃない人にあげないでしょうよ。それとも百貨店のお給料、そんなにいいの?」

「まさか!」

 そこは力を込めて否定してしまった。

「ふふっ、お客様いらっしゃったわ。行くわね」

 話が一段落したところでベテランスタッフの持ち場にお客様がやってくる。すかさずファーストアプローチへ向かう姿を見送った。

 今日は花岡君が休みなのでストールを持ってきていないが、返却する際は気を付けないといけないだろう。



 午後から出勤のシフトの日は夕食を会社で済ます。社員食堂のランチメニューは営業時間内まで提供されており、日替わりのボタンを押そうとしーー

(サラダにしておこう。あと、うどん) 

 ガッツリ系献立から消化の良い品へ変更する。

「あれ、今日はカツカレーだけどいい?」

 馴染みの厨房スタッフが声を掛けてきた。

「昨夜食べ過ぎちゃってね」

「余り物だけどフルーツをサービスするよ」

 小皿にリンゴとオレンジが盛られ、サラダと共にお盆へ乗せられる。
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