外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する


 基本的に外商員がつくお客様は百貨店へ出向かず、ご自宅で商品をご覧になる。
 外商部が取り扱う品々は顧客ごと異なり、店舗で扱っていないものも多い。なにより高額。
 この度ピックアップされた紳士靴を手に取って、わたしは佐竹さんから貰った情報と照らし合わす。

 お客様がいらっしゃった場合、専用の部屋へお通しする。周りの目を気にせず買い物を楽しめる環境を整え、専門スタッフによる商品説明も提供。ご所望が靴ならばシューフィッターがフィッティングをお手伝いするのだ。

(当たり前に高級モデルばかり)

 通勤靴を探されているそうだが、ここに並べたビジネスシューズらは一足三十万円はくだらない。どれも名品として知れ、世界のセレブが愛用している。

(特に……これ)

 ひときわ輝く一品に触れた。

「ほぅ、貴女もそちらがいいと思うか?」

 佐竹さんが入室してきた。お客様を招く前に失礼がないよう打ち合わせをしておく。
 わたしにはお客様の職業、住所、家族構成などの詳しい情報は伏せられる。外商部の顧客情報は共有しないのが通例なのだ。

「シンデレラシューズのメンズモデルですか、よく手配できましたね?」

「ツテを辿って、なんとか。だが、27センチのみの用意だ」

「お客様はご自身のサイズを27センチとおっしゃってますが、実際に履いてみない事には分かりませんね」
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