外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
 シンデレラシューズは日本を代表する老舗メーカー。その名が示すようレディースラインを製造し、女性を足元から支えるという企業方針が広く認知される。

「革靴は遊びが多い為、スニーカーサイズより0.5センチくらい小さくなる傾向があります」

「遊びとは?」

「爪先の部分です」

「あぁ、確かに先まで足は入らないな」

「とは言え履いてみない事には……ですが」

 職人が手作業で作った靴は個体差が生じ、また履く側の足の形も千差万別。長さだけが合えば良い訳じゃない。幅も大事。

「靴の説明は任せよう。分かっていると思うがお客様のプライベートへ踏み込み過ぎないように。貴女はミーハーな部分があるとも聞いている」

 念を押される。

「人をミーハーと言ったり、後輩に嫉妬してるんじゃないかと言ってみたり。先入観と偏見が過ぎやしませんか?」

 ミーハーであるとは同期から仕入れた情報だろうか。わたしの応酬に佐竹さんは片眉を上げて肩を竦めた。

「お客様を前にしても、そのプロ意識が揺るがないのを祈るよ」

「そんなに信用ならないならーー」

「いや結構、貴女と口論する暇はないので」

 ピシャリッと反論を封じる。わたし以外を選べるならそうしていた、滲む怒気で黙らせた。

「そろそろ約束の時間だ、お迎えに行ってくる。貴女はここで待機しろ」
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