外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する

4 お待たせしました ②

「あれ、僕を忘れちゃったの?」

 サングラスと帽子を外し、佐竹さんへ渡す。変装を解くと紛れもないCrockettの亮太が現れる。

「深山」

 みなまで言わない注意が飛び、慌てて頭を下げた。

(でも亮太がなんでこんな所に?)

 落ち着いてと自分へ言い聞かせ、冷静さを手繰り寄せる。しかし、背中から変な汗が噴き出す。

「シューフィッター役をやる事になってね。月曜10時のドラマ、知ってる?」

「存じております。撮影場所が弊社であるとも伺ってます」

 絨毯の織りを見た姿勢で返答。亮太がわたしの前に立つが、顔は上げられない。

「せっかくだから大郷百貨店で靴を選ぼうって」

「ありがとうございます」

 百貨店と縁があると言外に含む。それが撮影なのか、花岡君のことなのか。亮太の抑揚のない話し方では掴めない。

「あまり時間はなくて。さっさと始めてくれない?」

「この後、撮影があるんでしたね」

「うん、夜からね。一日オフなんてもう何年も無いよ〜たまには時間を気にせず眠りたい」

 ふわーわ、効果音付きのあくびをしつつ、ソファーへ腰掛けた。
 それを合図に商品提案をスタートする。
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