外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
 二足目を試着した亮太は前回と違い、履き心地を確かめる。

「私物の靴でテレビ出演されてますよね」

「おっ、真琴ちゃん知っててくれたの? 衣装はスポンサーの兼ね合いや、メンバー間で揃えるから私物が着られないけど、靴は割といけるんだ!」

(わたしはお客様として接している中、真琴ちゃん呼びは嫌だな)

 というより、2度目ましての亮太に不思議なまでにドキドキしない。

(これは仕事だから)

「お足元、失礼します」

 告げて屈むとサイズの確認をする。
 最初は踵がアキレス腱などを圧迫していないか、4本の指を揃えて触った。

 次は爪先を。

「靴の中で足の指が動きますか?」

「うん、動く」

「足の甲は締め付けを感じませんか? 外羽根仕様なので、甲が高めの方もお召になりやすいと思います」

「俺って甲高なの?」

「エジプト型と呼ばれる日本人で多い足の形ですね」

「ふーん」

「足は第2の心臓とも言われており、ご自身に合った靴をお選びになる事が健康管理へ繋がります。シューフィッターとはお客様の健康もサポートする仕事です」

「そっか」

 ふーん、そっか、相槌はどれも軽い。さして興味を引いてないんだろう。

「ドラマでは僕がシューフィッター役でお相手がアイドル役。リアルな僕と真琴ちゃんみたいじゃない? ところで真琴ちゃん、お客さんを好きになる?」
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