外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
 ともあれ佐竹さんの機転がなければ、亮太は満足の行く買い物が出来なかったのは事実。申し開きはしない。

(ここって前に話していたバー?)

 ロッカールームでメールを開くと、さっそく店舗情報が届いていた。

(たまには静かに飲むのもいいよね)

 いやーー違う。

(誰かに胸の内を聞いて欲しい)

 いや、これも違う。

 力が抜けて、その場へ座り込む。すると様子を遠巻きに様子を見ていた同僚等が寄ってきて取り囲む。

(そっか、わたし、花岡君と話がしたいんだ)

 大丈夫? 何があったの? 物知り顔で尋ねられると結論に至った。

 どの瞳も案じてくれているものの、三日月みたく細めた目元へは寄りかかれない。あのお手本通りの揺るがない笑顔が見たくなる。

(お願い、今夜だけでいいから頼らせて)

 彼女等の介助を遠慮し、バーへのナビゲーションボタンを押していた。
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