外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
花岡side
■
「花岡!」
閉店作業を終え、バーへ向かおうとしていた所を呼び止められた。振り向くまでもなく彼だと分かる。
ここ最近ずっと同じ提案をしてくる外商部員ーー佐竹だ。
「お疲れ様です」
「おう、お疲れ。君も良かったら一緒に飯でもどうだ?」
部下を引き連れ、これから祝杯でも上げるつもりだろうか? 彼が上機嫌な理由に心当たりがある分、眉間へしわが寄る。
「すいません、大事な予定がありますので遠慮しておきます」
深山先輩がバーへ向かったと把握している。あまり待たせると飲み過ぎてしまう可能性が高い。佐竹との会話などさっさと切り上げたいが、あちらはそうさせない様子。
「ほぅ、大事な予定とは?」
「プライベートな事ですのでお答え出来ません」
「ははっ、アイドルみたいな言い回しだ。深山さんの件、もちろん聞いたな?」
佐竹は鼻を鳴らし腕を組む。
「あれだけ騒げば嫌でも耳にも入ります」
その答えに部下の1人が身を乗り出そうとするも、佐竹は片手で制する。
(ふん、よく躾けられた犬だな)
心の中で毒つく。
「その目、深山の番犬にでもなる気か?」
犬で例え返され、つい吹き出してしまう。
「何がおかしい?」
「いえいえ、心を読まれてしまったのかと驚いただけです。外商部エースともなると人心掌握がお上手ですね」
「お前こそ物怖じしない度胸を褒めてやるよ。だが、尻尾を振る相手を間違えない事だ。俺が取り立ててやってるうちに決断しておけ」
「……」
「お兄さんも花岡の出世を望んでいるぞ」
外商部への移動は辞退した。時期尚早と自分でも思うし、周囲から思われている。
「チャレンジ精神で挑み、失敗を繰り返しつつ成長していくにしろ、迷惑を被(こうむ)るのはお客様です」
「花岡!」
閉店作業を終え、バーへ向かおうとしていた所を呼び止められた。振り向くまでもなく彼だと分かる。
ここ最近ずっと同じ提案をしてくる外商部員ーー佐竹だ。
「お疲れ様です」
「おう、お疲れ。君も良かったら一緒に飯でもどうだ?」
部下を引き連れ、これから祝杯でも上げるつもりだろうか? 彼が上機嫌な理由に心当たりがある分、眉間へしわが寄る。
「すいません、大事な予定がありますので遠慮しておきます」
深山先輩がバーへ向かったと把握している。あまり待たせると飲み過ぎてしまう可能性が高い。佐竹との会話などさっさと切り上げたいが、あちらはそうさせない様子。
「ほぅ、大事な予定とは?」
「プライベートな事ですのでお答え出来ません」
「ははっ、アイドルみたいな言い回しだ。深山さんの件、もちろん聞いたな?」
佐竹は鼻を鳴らし腕を組む。
「あれだけ騒げば嫌でも耳にも入ります」
その答えに部下の1人が身を乗り出そうとするも、佐竹は片手で制する。
(ふん、よく躾けられた犬だな)
心の中で毒つく。
「その目、深山の番犬にでもなる気か?」
犬で例え返され、つい吹き出してしまう。
「何がおかしい?」
「いえいえ、心を読まれてしまったのかと驚いただけです。外商部エースともなると人心掌握がお上手ですね」
「お前こそ物怖じしない度胸を褒めてやるよ。だが、尻尾を振る相手を間違えない事だ。俺が取り立ててやってるうちに決断しておけ」
「……」
「お兄さんも花岡の出世を望んでいるぞ」
外商部への移動は辞退した。時期尚早と自分でも思うし、周囲から思われている。
「チャレンジ精神で挑み、失敗を繰り返しつつ成長していくにしろ、迷惑を被(こうむ)るのはお客様です」