外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
 結局わたしはアイドルという響きでラッピングされた彼を応援していたのかもしれない。

(花岡君といい、わたしは本質を見抜けないんだ)

 膝を抱え座り込む。

(でも彼等の笑顔を嫌いになりきれない)

 目を瞑ると聴覚が研ぎ澄まされ、サイズの合っていない靴音を拾う。
 片足(かたそく)が脱げる気配がして無意識のうち顔を上げていた。

「あれ、真琴ちゃん?」

「へ?」

「こんな所で何してるの?」

 靴を拾いながら、こちらへ瞬く人物に覚えがある。その人は目深に被ったキャップの下からにっこり微笑む。

「ちょうど良かった。靴擦れしちゃってさ。手当してくれない?」

「え? な、何ですか! いきなり」

 わたしを躊躇なく引っ張り上げ、連れ立とうとしてくる。格好悪いが踏ん張って抵抗したら、なんと膝裏へ手を差し込まれた。

「な、な、な、何をするんですか!」

「ん? お姫様抱っこ。だって真琴ちゃんもケガしてるじゃん!」

 だいの大人を抱っこしつつ、痛いの痛いの飛んでいけ〜唱える亮太に人々が進路を譲る。これは関わりたくないと避けられても仕方ないか。

「降ろして下さい!」

「暴れない、暴れない。僕の正体がバレたら大変でしょ?」

 コソッと耳打ち。歌うような囁きに羞恥心は増すばかり。

「お、重いですよね? 腰を痛める前にこんな無茶は止めて下さい!」

「こう見えて鍛えているんだ、大丈夫! ほら」
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