外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
 スキップしてみせた。

「あ、あの、あまり揺らされると……」

「もしかしてお酒、飲んでるの?」

「は、はい」

 国民的アイドルへ吐瀉物をかける訳にもいかない。口元を押さえた。

「ーーよし! それじゃあスピードアップするぞ!」

「え、なんで」

 どんな思考回路なんだろう。亮太は宣言して駆け出す。否応なくしがみつき、振り落とされないようにする。

 まるでジェットコースターにでも乗っている感じ。亮太の目線で見る世界は高い。

「こんな事も出来るよ〜」

 調子づいてコーヒーカップみたく回転し、平衡感覚を奪われたわたしは目眩を起こす。

「やめて下さい。ほん、と、気持ち悪くなるので」

「吐いちゃえば? 嫌な事あったんじゃないの?」

 亮太は体幹を保つ。ぶれない視線で投げ掛けてきた。

「何があったかは知らないし、興味もないけど。こういう時は叫べばいい!」

 一瞬だけ真顔に戻り、わたしから手を離すジェスチャーをする。

「え? えーーきゃあぁぁ!」

「あははっ! いい声! その調子!」

 わたしの悲鳴が周囲に響き渡り、次いで亮太の笑い声が重なる。傍から見たら酔っ払いの戯れ、まさかCrockettの亮太がこんな真似をしているなど誰も見抜けない。

「真琴ちゃんを落っことしたりしないから安心して?」

 アイドルスマイルにウィンクが添えられるものの、全く信用ならなかった。
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