外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「そういえば靴擦れしてしまったんでしたっけ? 今日ーーいや昨日か。購入頂いたシューズをさっそくお召になられたんですね。あちらのサイズは大きいはずです」

 あのシューズは鑑賞用に買い求めたと判断され、まともなフィッティングをしていない。

「と言っても、ここで出来る事は少ないですが。お預かりして調整します」

「ううん、その前に真琴ちゃんの手当てをしようか。ストッキングの買い置きはないけど」

 救急箱がテーブルに置かれる。

「はい、ただし手当ては自分でどうぞ」

 有無も言わさず治療道具を渡された。亮太は血が滲む傷口を直視し、痛いの痛いの飛んでいけ〜と唱える。

「え、あの、私は靴のお直しを」

「だから手当てが先でしょ? 派手に転んだねぇ、痛々しい」

 これは手当てをしないと話が進みそうもないので、脱脂綿へ消毒液を染み込ます。

「しみる?」

 傷口に押し当てると彼が痛そうな顔をする。

「いえ、亮太さんが痛いの飛んでいけって言ってくれたので大丈夫です。あ! 亮太さんとお呼びするのは馴れ馴れしいですよねーー花岡さんとお呼びしても?」

 駄目だ、首を振られた。

「だって僕は花岡じゃない。痛いの痛いの飛んでいけ〜ってやってくれたのは亡くなった花岡の前妻で、僕の本当の母親。一樹とは異母兄弟なんだ」

「……立ち入った事を聞いてしまい、申し訳ありません」

 また首を振る。

「別に。みんな知ってるから。一樹から聞いてないの?」

 わたしも振り返す。

「花岡君とはプライベートの話をあまりしませんので。亮太さんとの関係も先日の件で知りました」

「ーーへぇ、意外。一樹は真琴ちゃんを気に入ってるとばかり。あいつさ、君の話をする時は嬉しそうなの。だから初めて会った時、意地悪しちゃった!」
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