外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
 亮太は悪戯めいた顔じゃなく、きちんと悪意を持った表情を浮かべる。これはさすがに笑って流せず、真意を問う。

「どうして? お2人は兄弟ですよね?」

「驚いた?」

「え、えぇ、まぁ」

「真琴ちゃん、一人っ子でしょ?」

「そうですけど……それが?」

「だろうと思った! 君は物を取り合ったり、ケンカしなれない感じがするもん。きっと大事に、お姫様みたく育てられたんだろうね」

 目を細める仕草に背筋がゾワリッとした。金銭面的な意味なら亮太の方が明らかに恵まれているだろうに、わたしを羨む。彼は飢えていた。

「て、手当ても終わりましたし、わたし帰ります」

「今日は母の命日なんだよ」

 逃さないと言わんばかり、手を掴まれる。

「父も一樹もこの日は寄り付かない。一緒に母を偲んでくれる人、居ないんだよ。ねぇ、真琴ちゃん?」

 何を頼まれるのか、分からないはずもなく。

「困ります!」

 みなまで言わさず、場を離れようとした。

「わたしを花岡君への嫌がらせの手段に使わないで下さい! あなた達はわたしを軽んじてばかり!」

「僕を1人にしないで? 慰めてよ」

 必死の訴えはこれっぽっちも伝わっていない。はなから聞き入れるつもりがない。

 亮太は行儀悪くテーブルを跨ぎ、わたしをソファーへ押し倒す。
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