外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
(本当にキレイな顔ーーだけど影がある。ミステリアスというより、本当は寂しくて仕方ないような)

 見上げて、改めて感じる。

「ねぇ、ボーッしてて大丈夫? この体勢、理解してる?」

「え、あ、はい」

 倒される際、後頭部を打ち付けないよう手を添えられていた。わたしを取って食べる一連の動作はパフォーマンスだろう。

(どちらかと言えば、下心を感じたのは花岡君の方かも……)

「って注意した側から、またボーッとしてる!」

「いっ、痛いです! 頬を引っ張らないで下さい」

「僕に迫られてるのに違う男の事を考えるのが悪い!」

 左右の頬をつねられ、痛みでばたつく。全力を出しきれない抵抗じゃ事態はひっくり返らない。
 亮太はわたしの両腕を縫い止め、じっくり見下ろす。

「頭の中でそいつと僕を比べたでしょ? で、どっち?」

「どっちとは?」

 質問の意図が本当に読めなかったので聞き返した。

「悪い子だね。挑発するの? それとも焦らすつもり?」

「わっ! な、なんで上着を脱ぐんですか!」

「あれ? 真琴ちゃんは着たままシタイの?」

「ちょっと待っーー」

 夢中で上半身を飛び上がらせたら、彼が脱いだスエットが被さる。オーバーサイズにすっぽり包まれていた。

「へ?」

 ポカンとしてしまい、指が全く出てこない袖を揺らす。

「ごめん、ごめん。そういえば真琴ちゃん、泣いてたっけ。僕は傷の舐め合いしてもいいんだけど」

 そこまで言うと、ガタンッ、わたし達が立てたものじゃない物音がする。
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