外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「花岡君は顔を上げて? あなたが謝る事はない」

「ーーそんなに兄の味方をしたい?」

「え?」

「俺にはそういう関係になりたくないって言っておいて、兄貴ならいいんですね? もしくは仕事へ繋げようとしてます?」

「花岡君……」

「申し訳ありません。俺もこんな事、言いたいんじゃないんです。顔を見たらもっと心無い言葉を言ってしまいそうでーー本当に申し訳ありません」

 乾いた音が生まれ、自分の手を払われたと認識するまで時間が要った。

(なんで、こんな言われ方をしないといけないの?)

「なるほど〜真琴ちゃんがあんな場所でしゃがみ込んで泣いてたのって、一樹のせいだったのか! そっかそっか、辻褄が合ったよ」

「泣いてません! 転んで痛かっただけです!」

「うんうん、泣きたくもなるさ? 僕に弱っている所を付け入られちゃっただけなのに、売り上げが欲しくてエッチするのかと疑われちゃうんだから。そりゃあ教育係として立つ瀬がないよね」

「そ、それは……」

 容赦なく言い当てられてしまい、ついに塞き止めていた感情が溢れてくる。

「ーーっ、もう、やだ、兄弟喧嘩に巻き込まないで!」

「先輩? す、すいません!」

 涙の気配に花岡君が顔を上げようとする。

「出てって! 一樹に真琴ちゃんの泣き顔を見る資格はない」

 亮太はわたしを隠すみたいに抱き締めた。更に優しく背中を擦り、嗚咽を誘う。

「わたし、花岡君の教育係としてやっていく自信がないよ!」

 女性として軽んじられた直後、販売員の素質まで踏みにじられて我慢ならない。

 気付けば亮太の腕の中で言っていた。
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