外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
 面接時、補佐役を頼まれたであろう真琴さんは俺の経歴など興味はなく、当たり障りのない笑みを作っていた。
 ところが履いているビジネスシューズを見た途端、彼女の目は輝いて本当に靴が好きなのだと知る。

「俺は両親が言うまま、兄が選ばなかった方へ進んできました。言わば自分の足で歩いて来なかったんです。
 それが真琴さんと一緒に働きたいと一歩踏み出して、プライベートを共に歩みたい。どうかあなたの隣へ並ばせて下さい」

 込み上げてくるものがあり、真琴さんの肩口へ額をくっつけた。

「ーー良かった。先輩後輩でいられないって、公私ともにパートナーになるという意味だったんだね?」

「はい、真琴さんを全力で助けます、守ります!」

「うん、わたしも花岡君を助けるし、守るよ!」

 ここで真琴さんが強く抱き返してくれた。

「花岡君が好き」

 ストールを広げ、2人で包まる。

 ロイヤルブルーの世界の中、額を合わせてビジネスシューズを見た。
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