外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する

7 ありがとうございます



「おかしいな? この辺りにあるはずなんだけど」

 わたしは脚立に乗り、該当の紳士靴を探す。

「在庫データは計上されているんだよね? 少し前に箱は見たんだよなぁ」

「……」

「花岡君?」

 探し物を手伝う事になったのだが、どうも花岡君のリアクションが薄い。傾げて問うと彼は不満を口にする。

「真琴さん、スイッチの切り替えが早すぎません? 今さっきまで想いが通じ合って、いい感じでしたよね?」

「それはそれ、これはこれ。花岡君は勤務中! 仕事中にイチャイチャ出来ないよ」

 と言うのは半分本当、半分は照れ隠し。照明が落ちていて良かった。きっとわたしの顔は赤い。

「言いましたね? では、さっさと見付けてイチャイチャしましょうね。今夜、真琴さんの家へお邪魔してもいいですか?」

「えっーー」

 いきなりの提案に持っていた商品を落としそうになる。

「あ、いや、下心があって言ったのではなく。兄貴が台本読みしてるので集中させてやりたいというか」

「あ、あぁ、そういう事」

 変な間が生まれる。

「……嘘です。下心ありました」

「でしょうね」

 白状にすかさず突っ込んでしまう。

「でしょうねって、ひどいですね。俺はただ信じられないんです。真琴さんも同じ気持ちでいてくれてるのが」

「わたしの気持ちが信じられないの?」

「ーー真琴さんはとても魅力的だから。社内であなたを狙っている男性社員、沢山いるんですよ!」

「わたしを? まさか! それを言うなら花岡君の方。平場の彼女と個人的に食事へ行くとか?」
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