外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
「職歴はともかく、年齢が上とか下とか関係ないです。さぁ、お手をどうぞ」

 椅子へエスコートされ、ストールも掛け直してくれる。

「電話のついでに温かい飲み物を買ってきました」

「ーーありがとう。花岡君は本当に気が利く。今回さえ乗り切れば、外商部で実績を重ねていけるよ」

「真琴さんに言って貰えると心強いです。ただ、あなたへ向ける気遣いは外商部員としてのものじゃありません」

 花岡君は視線を揃える為、片膝をつく。握ったままの手の甲へ口付けをした。

「1人の男とし、真琴さんへ最高のロマンスを提供したいです。俺と付き合って幸せだと感じて欲しい。真琴さんが蓬莱の玉の枝を望むなら用意するし、月へ行きたいならーー」

「行きたいなら?」

「一緒に行きます。初めての宇宙旅行にはガイドが必要でしょう? 美味しいお店、調べておきますね」

「……花岡君ってば」

 ユーモアのある返しに肩を竦める。

「俺、本気ですよ。さしあたり、この靴と同じ物を見つけ出します」

 花岡君はわたしの為ならばどんな要望も叶えると豪語する。そして側に居ると加えた。

「こんな事をした犯人、探さないの?」

「靴の手配を優先しますが、きちんと探して罰しますのでご心配なく」

「……わたしの机の下に隠してあるって事は、恨みがあるねよね?」
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