落ちこぼれ悪魔の扱い方
追憶
美弥の風邪はあっという間に治り、次の日には熱も下がった。
「本当に学校行けんのか?」
『36.6℃』と表示された体温計を見て、与崎が顔をしかめる。
「お前、体温計擦ったりとかしてないだろうな」
「それは熱を上げる方法でしょ。授業も不安だし、学校行くよ」
そう言う美弥は既に制服に着替え、メイクもばっちりしている。
学校に行く気満々だった。
与崎は美弥のなりを見て、大きくため息を吐いた。
「体調悪くなったら帰って来いよ」
「分かってるって。親父みたいなこと言わないで」
美弥はそれだけ言って玄関へ向かい、靴を履き替えた。
水没した革靴がまだ乾いていないので、今日はスニーカーだ。
「行ってきます」
返事は期待していないが、一応廊下を振り返って声をかける。
しかし、今日は珍しいことに返事が返ってきた。
「……行ってらっしゃい」
小さく聞こえてきたその声に、美弥は一瞬目を丸くする。
それから、ぱあっと笑顔を浮かべた。
「行ってきます!」
「二回言わなくても聞こえてるから」
与崎の呆れた声に見送られ、美弥は踊るような足どりで家を出た。