落ちこぼれ悪魔の扱い方

追憶


美弥の風邪はあっという間に治り、次の日には熱も下がった。

「本当に学校行けんのか?」

『36.6℃』と表示された体温計を見て、与崎が顔をしかめる。

「お前、体温計擦ったりとかしてないだろうな」

「それは熱を上げる方法でしょ。授業も不安だし、学校行くよ」

そう言う美弥は既に制服に着替え、メイクもばっちりしている。

学校に行く気満々だった。


与崎は美弥のなりを見て、大きくため息を吐いた。

「体調悪くなったら帰って来いよ」

「分かってるって。親父みたいなこと言わないで」

美弥はそれだけ言って玄関へ向かい、靴を履き替えた。

水没した革靴がまだ乾いていないので、今日はスニーカーだ。


「行ってきます」

返事は期待していないが、一応廊下を振り返って声をかける。

しかし、今日は珍しいことに返事が返ってきた。

「……行ってらっしゃい」


小さく聞こえてきたその声に、美弥は一瞬目を丸くする。

それから、ぱあっと笑顔を浮かべた。

「行ってきます!」

「二回言わなくても聞こえてるから」


与崎の呆れた声に見送られ、美弥は踊るような足どりで家を出た。


< 184 / 325 >

この作品をシェア

pagetop