そのモラハラ彼氏、いらないでしょ? ~エリート御曹司の略奪愛
第17話 アイリッシュコーヒーとブランコ
(え――)
肩から下ろしたヨガマットを、無意識に玄関の壁に立てかけて、七瀬は家の中に目を向けた。
玄関からすぐ見えるのはリビングだ。照明は消灯されていたが、リビングの右手にある寝室の扉がわずかに開いていて、中から光が漏れている。
その中から漏れ聞こえてくるのは、甘ったるい女の喘ぎ声と、荒々しい宗吾の息遣い――。
何が起きているのかわかっているはずなのに、頭がそれを理解しようとしなくて、足が縫い付けられたように動かなかった。
ただ、自分の心臓の音がとてもうるさくて、聞かれてしまうのではないかと不安だった。
七瀬は息をひそめると、のろのろと音を立てないように玄関扉を閉ざして、そっと鍵をかけ直した。
(…………)
とにかくこの場から離れなくてはいけない。その思いだけに突き動かされて、マンションを飛び出した七瀬は走って逃げた。
笑ってしまうくらいに頭が働かない。
自分がどこに向かっているのかもわからないまま、電車に飛び乗っていた。
(今のは、なに……?)
七瀬が不在の家に、宗吾が女性を上げていた。しかも、二人のベッドなのに……。
頭がガンガン痛むし、胸もムカムカして気持ち悪い。
電車を降りて、喘ぐように呼吸をしながら足が向くまま進んだが、気が付いたら『Vintage Voltage』の前に立っていた。
青山一丁目は七瀬にとって一番馴染みのある駅なので、何も考えずとも自然にたどり着いてしまったのだろう。
肩から下ろしたヨガマットを、無意識に玄関の壁に立てかけて、七瀬は家の中に目を向けた。
玄関からすぐ見えるのはリビングだ。照明は消灯されていたが、リビングの右手にある寝室の扉がわずかに開いていて、中から光が漏れている。
その中から漏れ聞こえてくるのは、甘ったるい女の喘ぎ声と、荒々しい宗吾の息遣い――。
何が起きているのかわかっているはずなのに、頭がそれを理解しようとしなくて、足が縫い付けられたように動かなかった。
ただ、自分の心臓の音がとてもうるさくて、聞かれてしまうのではないかと不安だった。
七瀬は息をひそめると、のろのろと音を立てないように玄関扉を閉ざして、そっと鍵をかけ直した。
(…………)
とにかくこの場から離れなくてはいけない。その思いだけに突き動かされて、マンションを飛び出した七瀬は走って逃げた。
笑ってしまうくらいに頭が働かない。
自分がどこに向かっているのかもわからないまま、電車に飛び乗っていた。
(今のは、なに……?)
七瀬が不在の家に、宗吾が女性を上げていた。しかも、二人のベッドなのに……。
頭がガンガン痛むし、胸もムカムカして気持ち悪い。
電車を降りて、喘ぐように呼吸をしながら足が向くまま進んだが、気が付いたら『Vintage Voltage』の前に立っていた。
青山一丁目は七瀬にとって一番馴染みのある駅なので、何も考えずとも自然にたどり着いてしまったのだろう。