そのモラハラ彼氏、いらないでしょ? ~エリート御曹司の略奪愛
「とりあえず、お疲れ様です」
陣がビールグラスを掲げたので、七瀬もグラスマグを両手に持って小さく乾杯する。
カクテルに口をつけると、砂糖とバターのまろやかさが濃厚で、スパイスがほんのり香ってあたたかかった。
「おいし……」
やさしい味のカクテルを飲んだ途端、ぽろっと涙がこぼれ落ちる。
結局、話し合いも中断されてしまい、何もできなかったが、宗吾の言葉を改めて思い返し、とてつもない攻撃をされたのだと実感した。
宗吾の口から吐き出された尖った言葉の一つ一つが、時間が経つにつれて心を深く抉り、傷つけてくる。
どこまで本心なのかはわからない。売り言葉に買い言葉で、平気で傷つける言葉を使う人だから。
でも、今後も彼と付き合い続けるというビジョンは、とうに消滅していた。
今後も、宗吾の激しい言葉にさらされていったら、いくら七瀬が前向きであろうと努力しても水泡に帰すだけだし、それは七瀬の心身を削り取る自殺行為にも等しい。
陣がいたから、宗吾はあんな言葉を吐いたのだろうか。いや、こちらが一人きりだったとしても、彼は強い言葉で七瀬を非難しただろう。
さっきは陣が攻撃のほとんどを引き受けてくれたが、七瀬ひとりだったらすべてを自分だけで受け止めなければならなかった。
今さら二人きりになんて、恐ろしくてなれない。
もう、元には戻れないし戻りたくない。
陣が黙ってハンカチを差し出してくれたので、うつむいたまま頭を下げると、それを借りてそっと目許を押さえた。
あんまり泣いては、明日の早朝クラスに差し支える。そのくらいの冷静さが残っているのは陣のおかげだろう。
陣がビールグラスを掲げたので、七瀬もグラスマグを両手に持って小さく乾杯する。
カクテルに口をつけると、砂糖とバターのまろやかさが濃厚で、スパイスがほんのり香ってあたたかかった。
「おいし……」
やさしい味のカクテルを飲んだ途端、ぽろっと涙がこぼれ落ちる。
結局、話し合いも中断されてしまい、何もできなかったが、宗吾の言葉を改めて思い返し、とてつもない攻撃をされたのだと実感した。
宗吾の口から吐き出された尖った言葉の一つ一つが、時間が経つにつれて心を深く抉り、傷つけてくる。
どこまで本心なのかはわからない。売り言葉に買い言葉で、平気で傷つける言葉を使う人だから。
でも、今後も彼と付き合い続けるというビジョンは、とうに消滅していた。
今後も、宗吾の激しい言葉にさらされていったら、いくら七瀬が前向きであろうと努力しても水泡に帰すだけだし、それは七瀬の心身を削り取る自殺行為にも等しい。
陣がいたから、宗吾はあんな言葉を吐いたのだろうか。いや、こちらが一人きりだったとしても、彼は強い言葉で七瀬を非難しただろう。
さっきは陣が攻撃のほとんどを引き受けてくれたが、七瀬ひとりだったらすべてを自分だけで受け止めなければならなかった。
今さら二人きりになんて、恐ろしくてなれない。
もう、元には戻れないし戻りたくない。
陣が黙ってハンカチを差し出してくれたので、うつむいたまま頭を下げると、それを借りてそっと目許を押さえた。
あんまり泣いては、明日の早朝クラスに差し支える。そのくらいの冷静さが残っているのは陣のおかげだろう。