そのモラハラ彼氏、いらないでしょ? ~エリート御曹司の略奪愛
第28話 もう、おしまい
車内ではかなりリラックスできたものの、いざマンションが近づいてくると体が自然に強張っていく。
駅からほど近い、恵比寿南にある五階建てのマンションで、宗吾と七瀬の部屋は最上階。
下から見ると、部屋に明かりはついていないので、宗吾は戻っていないようだ。
「では、私はここで待ってますので」
マンション前の路肩に拓馬が車を停め、陣が車を降りる七瀬のエスコートをしてくれた。
「今日のところは着替えと貴重品だけ引き上げて、他の物は彼と話をつけてから堂々と取りに来よう」
「……あの、陣さん。玄関まで、一緒に来てくれますか――?」
宗吾が不在なのはわかっているが、なんとなく一人で戻るのが怖くて、無意識に陣の袖を指で引っ張っていた。
「もちろん。じゃあ拓馬、少し待ってて」
エントランスからエレベーターを使って上へ。前回、ここへ戻って来た日は、鍵を開けた瞬間に知りたくない現実を知ってしまい、逃げたのだ。
同じ道をたどりながら、あの夜の光景がかなりトラウマになっていることを知った。精神的には強い方だと思っていたが、やはりショッキングで……。
自然と首が垂れていたが、陣がさりげなく手を握ってくれたのでハッと顔を上げる。
あたたかくて大きな手に覆われていると、心細さもあっという間に吹き飛ぶから不思議だ。
陣の存在に助けられて、自宅――そう呼べる心境ではないが――の前に立つと、おそるおそる鍵を回して扉を開ける。
玄関は自動消灯なので明かりが点くのはわかっているはずなのに、明るくなった途端に胸がバクバクと音を立てはじめた。
嫌な記憶がフラッシュバックする。
「なんだか……お化け屋敷に入る気分です」
おどけたふりをして陣に苦笑してみせると、彼は笑って七瀬の頭を撫でた。
「お化けが出ても、俺がいるから心配しないで」
この人はきっと有言実行なんだろうなと思えて、今度は心から笑った。
「恃みにしています。ちょっとだけここで待っていてください」
陣を玄関扉の外で待たせると、七瀬は深呼吸して家の中に入った。
駅からほど近い、恵比寿南にある五階建てのマンションで、宗吾と七瀬の部屋は最上階。
下から見ると、部屋に明かりはついていないので、宗吾は戻っていないようだ。
「では、私はここで待ってますので」
マンション前の路肩に拓馬が車を停め、陣が車を降りる七瀬のエスコートをしてくれた。
「今日のところは着替えと貴重品だけ引き上げて、他の物は彼と話をつけてから堂々と取りに来よう」
「……あの、陣さん。玄関まで、一緒に来てくれますか――?」
宗吾が不在なのはわかっているが、なんとなく一人で戻るのが怖くて、無意識に陣の袖を指で引っ張っていた。
「もちろん。じゃあ拓馬、少し待ってて」
エントランスからエレベーターを使って上へ。前回、ここへ戻って来た日は、鍵を開けた瞬間に知りたくない現実を知ってしまい、逃げたのだ。
同じ道をたどりながら、あの夜の光景がかなりトラウマになっていることを知った。精神的には強い方だと思っていたが、やはりショッキングで……。
自然と首が垂れていたが、陣がさりげなく手を握ってくれたのでハッと顔を上げる。
あたたかくて大きな手に覆われていると、心細さもあっという間に吹き飛ぶから不思議だ。
陣の存在に助けられて、自宅――そう呼べる心境ではないが――の前に立つと、おそるおそる鍵を回して扉を開ける。
玄関は自動消灯なので明かりが点くのはわかっているはずなのに、明るくなった途端に胸がバクバクと音を立てはじめた。
嫌な記憶がフラッシュバックする。
「なんだか……お化け屋敷に入る気分です」
おどけたふりをして陣に苦笑してみせると、彼は笑って七瀬の頭を撫でた。
「お化けが出ても、俺がいるから心配しないで」
この人はきっと有言実行なんだろうなと思えて、今度は心から笑った。
「恃みにしています。ちょっとだけここで待っていてください」
陣を玄関扉の外で待たせると、七瀬は深呼吸して家の中に入った。