そのモラハラ彼氏、いらないでしょ? ~エリート御曹司の略奪愛
七時前にスタジオに入り、早朝クラスを終えて八時。早朝クラスは三十分だけの短時間で、出勤前の会社員などが多い。陣もいつも通り受講してくれた。
スタジオ内で、生徒さんと付き合っているなんて口が裂けても言えないので、接するスタンスは変えずにレッスンを進めたつもりだが、ときどき目が合うと緊張してしまうので、いつにも増して呼吸に集中し、雑念を追い出すのに懸命になった。
しかし陣はいつもと変わらずで、帰り際に軽い雑談をするにも堂々としている。この胆の座り具合も、彼の土台を固めている要素だろう。
「ではまた木曜日にお願いします」
去り際に言い残した陣に、七瀬は笑って訂正する。
「明日も会社にお邪魔しますよ」
「あっ、そうだった! チェアヨガ、楽しみにしてます。では」
陣に企業ワークショップに呼んでもらって、クラスは明日が最終の全二回。
先週の今頃は、まさか宗吾と別れて陣の家で同棲をすることになったなんて、思いもしなかった。そう考えると、なんてめまぐるしい一週間だったのだろう。
生徒たちを見送ってから、七瀬も早めに着替えてスタジオを出た。実はこの後、近くの喫茶店で待ち合わせをしているのだ。
普段の陣は、早朝レッスンの後、その喫茶店で朝食を摂ってから出勤しているそうだ。
今朝は七瀬がいたので家で食べてきたが、あまり張り切って早くから出勤すると社員が嫌がるので、コーヒーでも飲みながら定時まで時間潰しをするのだとか。
独身男性の一人暮らしで、金銭的にも余裕のある人だから、自炊なんてあまりしないだろうし、家に食材がないというのも至極当然だった。
家の下には、お兄さんが経営するカフェバーまであるから、なおのこと。
これから先、陣との生活がどんなふうになっていくのか楽しみだ。
スタジオはビルの二階にあり、陣と待ち合わせしている喫茶店は、大きな道路を挟んだ向かいの通りのビルにある。
陣が窓際の席に座っているのが見えたので、手を振ろうとしたのだが――。
「七瀬」
背後から声をかけられて、文字通り飛び上がった。
この声、聞き間違えようもない宗吾のもの。
スタジオ内で、生徒さんと付き合っているなんて口が裂けても言えないので、接するスタンスは変えずにレッスンを進めたつもりだが、ときどき目が合うと緊張してしまうので、いつにも増して呼吸に集中し、雑念を追い出すのに懸命になった。
しかし陣はいつもと変わらずで、帰り際に軽い雑談をするにも堂々としている。この胆の座り具合も、彼の土台を固めている要素だろう。
「ではまた木曜日にお願いします」
去り際に言い残した陣に、七瀬は笑って訂正する。
「明日も会社にお邪魔しますよ」
「あっ、そうだった! チェアヨガ、楽しみにしてます。では」
陣に企業ワークショップに呼んでもらって、クラスは明日が最終の全二回。
先週の今頃は、まさか宗吾と別れて陣の家で同棲をすることになったなんて、思いもしなかった。そう考えると、なんてめまぐるしい一週間だったのだろう。
生徒たちを見送ってから、七瀬も早めに着替えてスタジオを出た。実はこの後、近くの喫茶店で待ち合わせをしているのだ。
普段の陣は、早朝レッスンの後、その喫茶店で朝食を摂ってから出勤しているそうだ。
今朝は七瀬がいたので家で食べてきたが、あまり張り切って早くから出勤すると社員が嫌がるので、コーヒーでも飲みながら定時まで時間潰しをするのだとか。
独身男性の一人暮らしで、金銭的にも余裕のある人だから、自炊なんてあまりしないだろうし、家に食材がないというのも至極当然だった。
家の下には、お兄さんが経営するカフェバーまであるから、なおのこと。
これから先、陣との生活がどんなふうになっていくのか楽しみだ。
スタジオはビルの二階にあり、陣と待ち合わせしている喫茶店は、大きな道路を挟んだ向かいの通りのビルにある。
陣が窓際の席に座っているのが見えたので、手を振ろうとしたのだが――。
「七瀬」
背後から声をかけられて、文字通り飛び上がった。
この声、聞き間違えようもない宗吾のもの。