『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

「ふっ」

 ハロルドは微かに笑みをこぼすと、

 ――すいすいすーーい!

 重力に逆らうように、足裏を地面に着けたままスッスッと二歩下がった。
 彼に襲いかかった男は、勢い余ってつんのめる。そこに背中からバッサリと斬った。

「な、なんだあの動きはっ!?」と、男たちはざわつく。

「あれは……おムーンウォーク!」

 キャロラインは目を見開く。
 まさか、旦那様もムーンウォークを習得していただなんて。

 ハロルドはしてやったりとドヤ顔でキャロラインを見た。

「私は完璧になるまで他人に見せない主義でな」

 父親はロレッタと同じタイプだった。

「お、お前ら! 怯むな、いけっ!」

 リーダー格の男が叫ぶ。すると2、3人が一斉にハロルドに襲いかかった。
 その時。

 ――カチッ、コチッ、カチッ、コチッ!

 ハロルドは秒針みたいにカクカクと規則正しく腕を動かして、

 ――くねくねくねくねっ!

 軟体動物みたいにぐねぐねと身体を歪ませた。

「あれは……おロボットダンス!」

 キャロラインはすっかり興奮して鼻息を荒くする。戦いで受けた傷の痛みも、どこかに飛んでいってしまったようだ。

「なっ……!」

「悪魔()きか……!?」

 男たちは未知の動きにたじろぎ、身体を強張(こわば)らせる。
 神に逆らうような不思議な動作に、恐ろしくて近寄れなかった。

「隙あり」

 一閃。
 また一人、倒れる。

「うわあああ! 悪魔めええええ!」

 恐怖のあまり錯乱した男が、奇声を上げながらハロルドに突進する。

 ――すいすーい、うねうねうねっ!

 ハロルドはムーンウォークでそれを避け、ロボットダンスで剣筋が見えないようにして、男を返り討ちにした。
 その動きは、見事に計算されていて。華やかで。美しく。

「み、見えますわ……! 旦那様の中に、精確に構築された、お半導体が見えますわぁ〜っ!!」

 元・現代人で、元・ダンサーの聖子(キャロライン)をも驚愕させたのだった。


 そんなこんなで、

 ――ザシュッ!

 ハロルドは最後の一人を片付けた。
 そして、

「ひっ!」

 月に照らされた鋭い剣先が、元乳母バーバラ・スミス伯爵夫人に向けられた。


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