『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

 ――チラッ。

 そんな子供たちの様子を、キャロラインはそわそわと落ち着きのない様子で見ていた。さっきから何度もチラチラと横目で二人を確認している。

(ふふふっ。来たわね……!)

 お継母様(おかあさま)のところへ行く行かないと言い争いをしている双子を尻目に、キャロラインはニヤリと笑う。
 そして「オッホン!」とわざとらしく咳払いをしてから、おもむろに立ち上がった。

 何事かと、双子の身体がピタリと止まる。二人とも俄然興味津々になって、さっきまでの喧嘩も忘れて継母の様子をじっと観察し始めた。

 キャロラインは舞台に上がったかのように、右を見て左を見て双子を見て恭しく一礼。
 そして一息吐いて姿勢を正したら、中腰になって丸テーブルにかかっているテーブルクロスの裾を両手で持ち上げた。

 じっと正面だけを見つめるキャロライン。途端に緊張した空気が広がった。
 双子も、メイドも、固唾を呑んでハーバート公爵夫人の姿を見守っていた。

 一分ほど()ったあと、

「やぁっ!!」

 突如キャロラインは気合いの声を上げて、掴んでいたテーブルクロスを勢いよく引っ張った。
 美しいタフタの布は、目にも見えないくらいの速さで移動して、後に残されたのは――……、

「すっ……すごいっ……!」

 美しくセットされたお茶の食器だけだった。
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