それらすべてが愛になる
 「覚えてます?清流ちゃんが来てしばらくした頃、俺に清流ちゃんがここに馴染めているかどうか聞いたこと」

 「…そうだったか?」

 「そうっすよ。俺がここに来てからも何人も新しい人が辞めては入ってきましたけど、『使えるかどうか』は聞いても『馴染めているか』を聞かれたのは初めてだったんですよね、だからよく覚えてるんです」

 まったくの無自覚だったのだろう。
 虚を衝かれた様子の洸に、舞原はますますいたずらな笑みを浮かべる。

 「…なるべくなら長く居てもらった方がいいだろ。またすぐ次探すのも面倒だしそれに、」

 「それならば、それ相応の対応をした方がいいんじゃありませんか?そろそろ魔の3ヶ月も目前ですし」 

 それまで沈黙を守っていた唯崎が冷静に指摘する。
 魔の三ヶ月――経営企画課にやってきた人材が、自分には向いていないと去っていくのが一番多いタイミングである。

 「唯崎君の言う通り。今みたいなことしてたらまた辞められちゃうんじゃない?」


 ここには、人の話を無視して勝手に話す人間しかいない。


 「とりあえず、全員仕事に戻れ」

 気心が知れているのはいいが、曲者しかいないのも考えものだ。
 洸は舌打ちしたい気持ちを堪えて、それだけを告げた。

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