それらすべてが愛になる
 気になって清流も顔を向けると、座っていたのはやや白髪混じりの黒縁の眼鏡をかけた五十代くらいの男性だった。

 「すみません、美味しそうに飲んでらっしゃるなと思ってつい。私は下戸で一滴も飲めないものだから」

 これはノンアルコール、とビールグラスを傾けながら笑う。
 そんなに豪快だっただろうかと少し気恥ずかしくなりながらも、追加を聞きに来てくれた店主に同じものを注文する。

 「いらっしゃい!今日は何にします?」

 「海ぶどう今日はあるかな?」

 「ございますよ」

 「じゃあそれと、ひじきと鶏皮の梅肉和え。あとはいつもの串盛りを」

 「かしこまりました!」

 注文を終えてノンアルコールビールで喉を潤した男性が、再びこちらに目を向けた。

 「こちらへはよく?」

 「いえ、会社の先輩に連れてきてもらったのが最初で、今日で二回目です」

 男性の方は置かれたメニューは一切見ずに注文する様子から、お店の常連のように思える。
 清流は失礼にならない程度にその男性の様子を観察した。

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