それらすべてが愛になる
 「いえ、私は今のところで頑張りたいです。だって、」

 確かに厳しくて、時に難しくて強引な人だけれど。

 仕事に人一倍責任と覚悟を持っているところも、それをおくびにも出さないところも、御曹司という立場に胡坐をかかないところも。

 『工藤さんのフォローするよう部長から頼まれました』

 『専門用語に苦戦してるんだろ、付き合ってやる』

 『何でも一人でやろうとしなくていい』


 本当は、とても優しいことも知っている。


 「だから…上司というよりも人として、とても尊敬しています」


 (………あれ?)

 するりと自分の口から零れ落ちた言葉に、どこか既視感を覚えた。
 なぜだろう、急に心臓がバクバクする。

 男性は、清流の返答を聞いて少し瞠目した後、鷹揚に微笑んだ。


 「貴方はその上司の方が好きなんですね、その方は幸せ者だ」


 騒がしい店内で、男性の静かな声は不思議とよく届いた。


 好き………?


 その言葉は不思議なほど自然に自分の中に落ちてきた。
 ふと、前に洸とした会話が脳裏に蘇る。


 『好きなタイプは?』

 『人として尊敬できる人がいいです』


 その瞬間にら今まで封じ込めてきたものが一気に溢れ出すように、一つの想いが全身を駆け巡る。

 (……あぁ、そうか)


 ―――私、加賀城さんのことが、好きなんだ。


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