それらすべてが愛になる
 思い返せば、洸からの『結婚しないか?』という提案は驚くほど気軽だった。

 洸にとって結婚というのは、恋だとか好きといった感情とは切り離されたものだとはっきりと表しているようで、その事実が今は苦しい。

 相手が好きなのに、相手は自分を何とも思っていない。

 (…そんな結婚をするのはあまりにも虚しすぎる)

 自分に興味のない人に振り向いてもらおうと努力して、それが叶わなかったときの空虚さを清流は身をもって知っていた。

 側にいられればそれでいい。
 そう割り切るには、あらゆる面で超えるべきハードルが高かった。

 ―――この同居生活は、試用期間の終わりを迎えると同時に終わる。

 残された期間はあと三ヶ月と少し。
 その間は、この気持ちは絶対に気づかれてはいけないと心に決める。


 どこまでも落ち込んでいきそうな気分を変えたくなって、キッチンへと移動して冷蔵庫を開けた。

 ドアポケットにあるミントとレモンを入れたガラスピッチャーを取ろうとして、ふと開封済みのワインボトルが目に入る。
 前にマルシェで珍しいチーズをたくさん買って、それに合うワインをついこの前洸が開けたところだった。中身はまだ半分近く残っている。

 (……明日休みだし、一杯くらいいかな)

 シャワーを浴びたせいかあれこれと考えすぎたせいか、何だかすっかり酔いが醒めてしまった。

 このまま洸の帰りを待つのも落ち着かない。
 それにもう少しだけ酔いたくなって、清流はワインボトルに手を伸ばした。

< 138 / 259 >

この作品をシェア

pagetop