それらすべてが愛になる
 ◇◇◇◇

 家に帰った洸は、リビングドアを開けて目に入った光景に足を止めた。
 開いたワインのボトルと空のグラス、そして清流はソファーで眠りこけている。

 「ったく、人の気も知らないで…」

 帰ったらどう顔を合わせようか、と悩んでいたのは清流だけでなかった。

 営業に同行して商談を二件終わらせてから、会社に戻る気にもまっすぐ帰る気にもならず、渋る槙野に車を会社に置いてこさせて無理矢理飲みに付き合わせた。
 もうそろそろ帰った方がいいですよ、とややうんざりした顔の槙野にタクシーに押し込められたのが、日付が変わる直前のこと。

 「おい、起きろ」

 体を揺すると、グダっと横たわった体をもぞもぞと動かしながら目を擦る。

 「んー…、あれ、かがしろさん、、?」

 ようやく目蓋が開くも目の焦点は合っていない。

 「大丈夫か?溶けた餅かスライムみたくなってるぞ」

 「えー…どろどろですか?」

 ぐだぐだの会話の後、程なくしてぱちりと音がするくらいの瞬きをした清流と目が合う。
 どうやら眠りの淵から覚醒したらしく、ソファーに沈み込んでいた体が跳ねるように飛び起きた。

 「あわっ!?え、うそ、私寝てました…?」

 「思いっきりな」

 とりあえず酔い覚ましにと、水を注いで渡す。
 清流は恐縮したようにグラスを受け取って、半分ほどを一気に飲んだ。

 「あの……すみませんでした」

 清流は背筋を伸ばし、ソファーの上に正座して頭を下げる。

 「いいよ別に、家の中なら気が抜けることもあるだろ」

 「いえそれだけじゃなくて…今日の昼間のことです。
 ずっとどう謝ろうかって考えていて…あの言い方は間違っていたなと思ったんです、一方的な押しつけみたいだったので」

 しゅんとした清流はいつもよりさらに小さく見える。

 もしかして、それを言うためにリビングで待っていたのだろうか。

< 139 / 259 >

この作品をシェア

pagetop