それらすべてが愛になる
 結婚生活は、想像していたほど悪いものではなかった。
 ひどくこき使われたり虐げられるといったこともなく、家事全般をすることは実家暮らしの頃と大して変わらなかったから。

 ただ、大学一年のときは1限から授業のある日も多く、毎朝四時半起きで家事をこなし通学する日々が続いた。

 休日は近くに暮らす義母の買い物や病院に付き添ったりしつつ大量の課題やレポートに追われているうちに、とうとう体力の限界が先に来た。

 「それで入学してしばらくして体調を崩して。周りからはもう結婚したんだし大学も辞めたら?と言われたんですけど、相手だけは辞めないほうがいいと言ってくれて…一年の休学を提案されたんです」


 『僕もさすがに数か月で離婚するのは世間体が悪いから、最低一年はこの生活を続けたい。君もすぐには実家に帰りづらいだろう?だから、一年休学してその間は結婚生活に専念してもらえないだろうか?

 そして一年後に離婚する。僕はそれで『結婚歴』が手に入るし「もう結婚生活はこりごりだ」とでもいえば周りもほっといてくれるだろう。君は一年後に復学して、ちゃんと勉強して大学を卒業しなさい』

 そして大学には体調不良を理由に休学届を出した。

 「…相手が言ったことはそれだけ?休学しなくても済むように、肩代わりはしてくれなかったのか?何も?」

 そう尋ねる洸の眉間にはしわが寄っていて、清流は曖昧に笑うしかない。

 「そうですね、でもそれが契約だったので。相手もその条件で最初にお金も出しているわけですし、私もそういうものだと思ってました。……だから、ここに来て加賀城さんに『一緒にやればいい』って言われたとき、すごくびっくりしたんです」


 今までそんなことを言われたこともなかったし、
 自分の中にもその発想がなかった。

 だから頼ってもいいんだと言われたようで、すごくすごく嬉しかった。

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