それらすべてが愛になる
 相手は研究職に従事していて、とにかく四六時中没頭している人だった。

 彼の意識の大半はその研究に向けられていて、本人にとって無駄と感じることには見向きもしない性格だったので、次第に清流もただ淡々と日々をこなすだけになった。

 生活リズムも違うため顔を合わせることもほとんどなかった。食事を用意し家事をして、それに対して何の反応も返ってこない生活。

 相手に対する恋愛感情は一切なかったし、相手にすれば清流がそれらをやることは『契約』なので当然のことだったのだろうが、それでも自分の存在を顧みられない生活というのは精神的にこたえた。

 一度、少しはコミュニケーションを取れないかと食事と一緒にメモ書きを置いてみたりもしたが、翌朝ゴミ箱に丸めて捨てられているのを見たとき、もう何もしないでおこうと心に決めた。一年という期限が見えていたことで、頑張れていたような気がする。

 それでも、清流が大学で学ぶことだけには理解を示してくれた人でもあった。

 洸のいうようにそのために何かをしてくれる人ではなかったけれど、味方のいなかった生活の中ではそれだけが唯一救いだったように思う。

 一年後、お互いの同意のもとで離婚が成立したときも『これからは勉強を頑張りなさい』とだけ言った。

 あの頃の生活は思い出したくはないし、離婚成立後は連絡も取っていない。
 けれど、あの人のことは嫌いになれないでもいる。

 二度と会うことのない、遠い、遠い親戚の人のような感覚だ。


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