それらすべてが愛になる
 「離婚が成立した後は実家に戻りました。一年での離婚はお互いだけで決めてたことだったので、突然帰ってきて叔母は驚いていたしものすごく怒りました。早々に離婚してバツがついてこれからどうする気なんだと」

 相手は一度の結婚歴を勲章か免罪符のように扱われる一方で、自分はまるで烙印のように言われる理由が分からなかった。

 あの暮らしが幸せだったかといわれたら違うし、周囲がいう結婚生活とは程遠い。それでも、清流なりに頑張った日々がすべて否定されたような気がした。

 「復学も反対されましたけど、生活費も学費もバイトで稼ぐ条件で何とか認めてもらいました。結局バイト代だけでは足りなくて援助をお願いすることもありましたけど…ただ、卒業が見えてくると今度は就職のことをいろいろ言われるようになって…」

 叔母のいう良い条件での就職先はなかなか見つからない。
 その程度の会社にしか決まらないのなら、将来安心してあなたに会社を任せることなんてできないと言われて、またやり直し。そうしている間に卒業が近くなっていく。


 『ねえ、就職活動がうまくいかないのなら、また縁談を受けてみる気はない?もしそれがまとまれば『会社を譲る』と一筆書いてあげてもいいわ』


 ―――もう二度と、結婚なんてしない。

 ずっとそう思っていたけれど、その気持ちが揺らいだのは会社のことがあったからだった。

 離婚して実家に戻ったとき、清流の父と母が建てた以前の家が取り壊されて真新しい知らない家に変わっていたのを見たときの衝撃を今でも覚えている。

 『だってあの家、古かったでしょ?
 修繕するくらいならいっそ建て替えた方がいいかと思って』


 思い出がなくなっていく気がした。

 これでもし、父の作った会社までなくなってしまったら?


 結局それは体のいい撒き餌のようなもので、実際清流に継がせる気はなく佐和子の借金返済のための手段に過ぎなかったわけだけれど。

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