それらすべてが愛になる
 「清流がいなくなる少し前、清流の様子が変で、どうすれば喜ぶかと思って思いついたのが買い物に誘うことで…それで、欲しそうにしてた服をプレゼントしたの覚えてるか?受け取るのを断られて、あのときの泣きそうな顔が忘れられなくて…それでやっと分かった。

 俺は喜ぶ顔が見たいと思うのも、清流が好きだからだって」


 ―――え?


 どういうことなのか混乱して、思わずうそ…と呟いてしまっていた。
 清流が洸の顔を見上げると、洸はただ何かを噛みしめるように微笑んでいる。

 「あの日清流に初めて会って、お見合いで再会して、それから一緒に暮らすようになってからいつも思っていた。

 危なっかしくて、何でも一人で抱え込もうとする清流が、何をしたら喜ぶのか。どうやったら心を開いてくれるのか。
 落ち込んでたら笑わせてやりたいし、辛いことから守ってやりたい。これが好きじゃないなら一体なに?」

 じわじわと、洸の表情や言葉の意味が、自分の心の中で溶け始める。

 清流は無意識のうちに、ぼろぼろと涙がこぼれた。


 「……で、でも、私、」


 本当に、自分なんかでいいのだろうか。

 ぼろぼろとこぼれている涙が嬉しさからなのか申し訳なさからなのか分からず、そんな自分が嫌でたまらない。

 「何が不安?何が恐い?
 自分が求められるのが?俺とのことを誰かに反対されるのが?
 もし誰かに反対されようが蹴散らすし、万が一家族が反対するなら俺は縁を切ってでも清流を選ぶ。

 だから、清流は俺といろ」

 
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