それらすべてが愛になる

17. beyond paradise

 帰ってきたときはまだ夜になったばかりだったけれど、気づけばかなり遅い時間になっていた。

 疲れてるだろうし風呂に入ってきたらと提案されて、清流はいったん部屋でスーツケースの荷解きをしてからバスルームへ向かうことにした。


 いつの間にかお風呂が沸いていて、バスタブへと身を沈める。
 体を包み込む温かいお湯と、しばらくぶりに一人だけの空間にいることに少し気が抜けて思わず漏れた声が反響した。

 清流は揺らめく水面を見つめながら、今日の出来事を思い返す。

 (何だか…まだ信じられない)

 本当は今日のこと全部―――洸が自分を探してくれていたことも、再会できたことも、告白されたこともすべて夢だったんじゃないか。

 清流は目を閉じて数秒数える。

 次に目を開けたら昨日と同じホテルの天井が見えて、やっぱり都合のいい夢だったのだと落胆することになったらどうしよう。そんなことを考えながらそろりと目を開けると、先ほどと変わらない水面が目に映ってここはやはりバスタブの中だった。

 きっと今の自分の顔を鏡で見たら、安堵の表情をしているに違いないなと思う。


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