それらすべてが愛になる
 一度ノックしたけれど反応はなく、悩んでからそっとドアを開ける。

 洸の部屋に入るのは初めてだ。モノトーンで統一された室内は、リビングや清流が使っている部屋とは違って男の人の部屋だな感じる。
 部屋のダウンライトは消えていて、ベッドサイドの淡い灯りだけが室内を照らしていた。

 音を立てないようにドアを閉めて中に入ると、洸は一人用にしては大きすぎるベッドの上で、背中を向けた状態で横になっていた。

 「……えっと、寝てますか?」

 そっとベッドに乗って近づいて、横たわっている洸の顔を覗く。
 その寝顔を見て、妙に緊張していた全身から力が抜けた。

 眠っている洸を起こさないようにそっと髪に触れてみる。
 洸もお風呂に入った後のようで生乾きの髪はやや湿り気を帯びていて、いつも朝起きると横髪が跳ねているのはこのせいなのではないかと思った。

 「…ちゃんと乾かさないと風邪をひいちゃいますよ?」

 返事がないのは分かりつつも、お節介が顔を出す。
 部屋は薄暗く静かで静まり返っているのに、ここに一人ではないというだけで幸せな気持ちになる。けれど、それと同時にほんの少しだけ欲が顔を出した。

 清流は起こさないよう慎重に洸の体に掛け布団をかける。
 そして、その隣りに自分の体を滑り込ませた。

 「……洸さん、好きです」

 手紙には書いていたけれど直接は言っていなかったこと思い出して、清流はこの距離でかろうじて聞こえる大きさで呟いた。

 後ろから抱きつくのは憚られるので、洸の大きな背中に額をぎゅっとくっつけた。
 これで気持ちが伝わるといいなと願いながら、清流は目を閉じる。


 ―――それから少しして、洸の体が動く気配を感じた。

 横になっているベッドが揺れて、背中を向けていた洸の体が反転してこちらを向いたように感じる。

 (もしかして、起きてた…?)

 どうしようと思いつつも寝たふりを続けていると、清流が洸にそうしたように、今度は自分の髪を撫でられる感触がした。

 その心地よさにウトウトしそうになったとき、また洸の体が離れていく気配がして、思わず目を開ける。


 「三度目は、ないんじゃなかったんですか…?」


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