それらすべてが愛になる
 ◇◇◇◇

 「洸さん、私、変なところないですか?」

 「変じゃないって似合ってる」

 「本当ですか?」

 「本当…ってこれ何回目だ?」

 とある休日の午後。
 朝から何度も聞かれているその質問に、洸は苦笑いをしながら答える。

 清流が着ているのは、洸が一度プレゼントしようとして断られた赤いグレンチェックのワンピースだ。想いが通じ合い改めてプレゼントして受け取ってもらえたそれは、洸が想像した通りよく似合っていた。

 「だってご両親との顔合わせですよ?おかしなところがあったら嫌ですもん…」

 「そんなに気を張らなくてもいいって」


 清流がこんなに落ち着かないのも、今日は洸の親と顔合わせの日だからだ。

 洸に婚約者がいると知ってからの両親――特に父親は妙に浮き足立っていて、一度顔合わせがしたい、実家に来てもらいなさいなどととにかくしつこかった。

 (まぁ、ようやく身を固める気になったかってことなんだろうけど…)

 とはいえ清流もまだ働き始めたばかりで、今すぐではなくもう少し落ち着いてからというのが二人の認識だったので、実家への訪問は入籍を決めたタイミングにしようと話し合い、今回はホテルのラウンジで軽く顔合わせにすることにしたのだった。

 「まだ少し時間があるな、さっき一度連絡が来たからそろそろ来るとは思うけど」

 洸が腕時計を確認すると、また清流がそわそわし始める。

 「すいません、私ちょっと髪とか直してきていいですか?」

 「いいけど、どこもおかしくないぞ?」

 「でも、最後に確認しておきたいんですっ」

 「分かったよ」

 すぐ戻りますからという清流に、洸は説得を諦めたように笑った。


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