それらすべてが愛になる
 「実はロビーに行きたいんだけれど裏口から入って来てしまって、場所が分からなくて困ってたんです」

 「そうだったんですね、私もロビーに行くところなので、よろしければ一緒に行きますか?」

 「助かります、ありがとう」

 確かにここの通路は広い上に入り組んでいて、分かりにくいかもしれない。とはいえ清流も初めてくる場所なのだが、たぶん来た道を戻ればいいだけなので迷うことはないはずだ。

 「あっ、そうです、あのときの食事代…!」

 「…そんなことありましたっけ?」

 「だめですよ、あのときのおつりまで預かったままなんですよ私。お金に関することはうやむやにしたくないんです」

 とぼけたように首を傾げる男性に清流は言いつのる。そういえば洸ともこんなやり取りをしたなと思い出して、ふと、何か引っかかるものを感じた。

 「けれどこんなところで再会するとは。今日はデートか何かですか?」

 「えっ?い、いえ…その、相手のご両親と初めてお会いすることになってて…」

 それはおめでたいですね、と微笑む男性に清流はなんと返したらいいか分からず俯いた。


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