それらすべてが愛になる
 「どうされたんですか?あまり浮かない顔をしていますが…もしかして会うのは気乗りがしませんか?」

 「いえっそんなことはないんです、会いたいといっていただけて嬉しいですし、会えることは楽しみなんです。でも…少し不安で」

 「不安とは?」

 「その…受け入れてもらえるかなとか、どういう印象を持たれるかなとか」

 ましてや自分の場合は過去のこともある。
 結婚相手として相応しくないと思われる可能性だってあるのだ。

 「心配することはありませんよ。私があなたとお話ししたのは居酒屋での一度だけですが、あなたがとても素直で真面目で、ご両親の愛情をたくさん受けてこられた素敵なお嬢さんだということは分かります。だから自信を持って」

 清流はその言葉にはっとして顔を上げると、男性が励ますように柔和な笑顔を向けている。

 「それに、緊張しているのは親のほうも同じなんですよ。実は私も今日、息子のお相手の女性と初めてお会いするんです」

 「えっ、そ、そうなんですか…?」

 「うちの息子はこう言ってはなんですが…昔からそれなりに女性に言い寄られてはいたようなんですが、変に冷めたところがあるというかあまり興味がなかったようでね。だからそういう女性ができたというのは喜ばしいんです。けれど本人からは『余計なことは話すな』とか『変なこと言ったら二度と会わせない』とか脅されて、おまけに迷って待ち合わせにも遅刻しそうだし、やれやれ会ったらまた何を言われるか…」


 こんな偶然、あるだろうか。

 そもそもこの男性のお子さんは思春期の息子さんだったんじゃ?清流がそんなことを考えていると、男性の持つスマートフォンが鳴った。

 「噂をすれば息子からです。もしもし、あぁ母さんはもう着いた?分かっている、時間に遅れるっていうんだろう?ちょっとホテルの中で迷ってしまって今親切なお嬢さんに……」

 そんな会話をしているときに、通路を抜けてホテルのロビーに出た。


 ちょうど誰かと電話中の洸がこちらを振り向いて――今まで見たことのないほど驚いた表情をした。


 「何で、親父と清流が一緒にいるわけ…?」


 (え、お父さん……?)


 洸のその言葉に、清流もぽかんと二人の顔を見比べるしかなかった。


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