ChristmasLight*
「それでこの間は散々!全く仕事手に付かなくてね、二日間残業だったのよー」
ライトアップされたツリーの前のベンチで足をブラブラさせながら、あたしはごちた。
「じゃあ、ちゃんと好きだったって事っすよね……」
「そう、なのかな〜〜」
苦笑する。
好きだったのかはやっぱりよく分からない。
それに、クリスマス誰かと過ごしたいから弘人と付き合った事にも変わりはない。
発端が情けないのだから、今更綺麗事を言った所で意味の無い気がした。
「……で、なんでまた貴方が居るんすか」
「それはこっちのセリフよ少年。あたしはツリー見に来ただけなんだから」
そう。
仕事終わりになんとなくツリーを見に来た。
なんだかんだでクリスマスムードは好きだし、ここへ来たらまた、白い少年に会えるかもと思ったのだ。
本当に会えるとは思わなかったが。
「また彼女待ってるの?」
「彼女じゃないです」
無愛想に彼はマフラーに顔を埋める。
今日も、とても寒い。
「お姉サン……もう一つ理由、あるんじゃないすか」
少年はもごもごと言った。
「もう一つ?」
「ここに来た理由……」
少年は人込みを見つめていて、あたしは少年を見ていた。
「少年に会う為……とか」
「……ほんとすか」
少年の声に抑揚は無い。
どこか人間離れしていると言ったら失礼だろうか。
「ほんとよー。まぁでも、確かにもう一つ理由はあるか、な……」
ツリーの前。
弘人にフラれた場所。
だから逆にまた、弘人に会えるかも
なんて微かに
ほんの微かに思って来た。
彼の家も勤め先も知っているけど
曖昧な心のままでは会いに行けなくて
だから偶然にでも顔が見たかった。
「なんだ……あたし」
少年は、あたしを見た。
「あたし、ちゃんと恋してる」
もう遅すぎた恋を。
また、ポタポタと流れるもので実感した。