ChristmasLight*
「はぁぁ〜〜……」
「ちょっと!ダレてないで仕事してよ、今日は絶対に定時で帰るんだから!!」
意気込む同僚を尻目にあたしは浮かない顔をしていた。
今日は待ちに待ったクリスマス。
だけど平日。
こんな日に有給なんぞ取りでもしたら、ここでは上司に白い目を向けられる事請け合いで、サラリーマンは仕事に終われて定時を迎える。
例の6人の女子社員は、退社後見事にデートらしい。
「はぁぁ……」
もう一度あたしは溜め息を漏らした。
デスクの上にはパソコンに資料、それから黒い小さなタオルハンカチが乗っている。
「……」
これと睨めっこをする日々が続いていた。
あのツリーの前で泣いた日、少年があたしに貸してくれた物だ。
天使的に白いレースハンカチでも出てくるかと一瞬期待したが、当たり前の様に裏切られた一品である。
「あれから会えてないのよねー……」
「何が?」
「なーんでも」
向かいの同僚をあしらってタオルを袋にしまい、仕事を再開する。
「洗って返すから!」
と言って手元に持ったまま、随分経ってしまった。
何度かツリーの前に足を運ぶものの、少年にはあの日以来会っていない。
(それに……)
弘人にも、会えていない。
実際は偶然を装って会いたいのと、まだ会わないと思う心がある。
……ま、彼女をフった現場に足を運ぶ人もいない、か……
……キーボードを打つ指が自然と止まっていた。
弘人は……既に新しい彼女を作ったかもしれない。
「……でもあたし、決めたんだから……大丈夫」
定時まで後2時間。
今日はクリスマス。
ライトアップ最終日。