あなたは一体誰?
そして私はデザートを食べ始めてから、ふと隣の孝明を見てはっとする。

「た、孝明っ、食べたの?!」

「え? どうしたの?」

慌てる私をよそに孝明はきょとんとしている。

「……大変、お医者様に……」

「美里、おちついて。何のこと?」

「何のことって……孝明ハチミツアレルギーじゃない?! それなのに……」

そう、孝明はハチミツアレルギーなのだ。結婚前から私は義母に口にさせないように散々注意されてきたのだ。

勿論、孝明本人も自覚しており、新婚当時、駅前にできたパンケーキ屋さんに2人で食べに行った際も孝明は代わりに生クリームをつけて食べていた。

「もう治ったんだ。美里に言ってなかったっけ?」

「え……? 治った? アレルギーが?」

そんなことあるのだろうか。到底信じられない気持ちで孝明を見つめる私を見て、孝明が歯を見せて笑った。

「美里が写真に夢中になってる間に食べたからもう15分は経ってる、けどほら、なんともないよ」

「でもこれから何か反応が……」

「俺を信じて。もう大丈夫なんだ」

(本当に……?)

私は心配でデザートの味がよくわからないまま食べ終わると孝明と家路についた。

そして孝明がベッドで眠るのを確認してから、スマホでアレルギーが自然に治るのか調べてみたが、そんなことはありえないとする文言が目立った。

(私の隣で寝てるのは……ほんとに孝明なの? それともニセモノ……?)

私は考えを巡らせながらも答えは出ず、無理やり目を瞑ったが、その夜はなかなか寝付くことが出来なかった。

(やっぱり……おかしい……)

これは妻の勘だ。

私の隣で眠る孝明は私の夫ではない。

──漠然とそう思った。
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