エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
「今日はディナークルーズを予約しているんだが、夜も一緒に食事できると思って構わなかったな?」
 荷物を片付けながら五十里がそう声をかけてきた。それはまさに今釘付けになっているこのミシガン湖でのクルーズだろう。

 そんなツアーを予約していたとは想像もしていなくて、驚いてしまった。
「ディナークルーズですか? すごく嬉しいです!」
 外の景色に夢中になっていた莉桜がくるっと部屋の中を振り返ると、五十里がくすくすと笑っている。

「ネコにかつお節みたいだな。まあ、喜んでくれてよかった」
 着ていたスーツを脱いだ五十里はクローゼットのハンガーにかけている。
 ネクタイを外しワイシャツのカフスを外すに至って着替えだ! と気づいた莉桜である。

 慌てて、五十里から目を逸らして、また窓の外に目をやる。くすっと五十里から笑い声が聞こえた。
「別に見ても構わないけど?」
「それはちょっと……」
 莉桜は今度はスマートフォンを取り出してシカゴの付近の観光案内を確認する。

 するっと背後から手が伸びてきて、ぎゅっとハグされた。
「どこかいいところはあった?」
 耳元に囁かれてどきんとする。
 五十里の声はいつも甘くて優しい。
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