エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 そのキスは官能的で甘やかで、立っていられなくなるくらいだ。
 いつの間にか包み込まれるように抱き締められていて、莉桜はうっとりとそのキスに溺れさせられてしまった。五十里にもたれてきゅっと手を背中に回す。

「このままじゃ、観光にいけなくなるぞ」
「え? それはダメです」
 莉桜の返事を聞いて、五十里は苦笑して身体を離してくれた。
「仕方ない。じゃあ、今は勘弁してやろう」
(今は? じゃあ、いつかは勘弁してくれないってこと?)

 いつのことかは分からないが、それはそう遠くない気がした。
 いたずらっぽい五十里の表情にも胸をどきどきさせていると、五十里が莉桜の手を指を絡めて繋ぐ。
「じゃあ、行くか」
 向けられた華やかな笑顔に莉桜も笑顔を返した。
「はい!」

 平日の美術館は人も少なく、二人は時に一緒に同じ絵を見たり時に自分たちのペースで作品を観覧したりして時間を過ごす。

 それでも五十里は必ず莉桜の目の届くところにいてくれて、莉桜もゆっくり見たい作品はゆっくりと見て、五十里がゆっくり見ている時は休憩したりしながら美術館を巡った。
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