エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
「これ、美術の教科書に載ってましたね。教科書で見たものを自分の目で大人になってから見るのって不思議な感じです」
 ゴッホの絵の前で莉桜は立ち止まって、五十里にそっと話しかける。

「そうだな。俺も海外出張で時間があると、たまに美術館へ行ったりするな。ニューヨークの近代美術館なんかもとてもいい」
 もちろん莉桜もそれは一緒だ。海外でステイのときは観光地を巡ることも多く、一時期は美術館巡りも随分としたものだった。

「私も近代美術館好きです!」
「ルーブルやオルセーも行った?」
「行きました。特にオルセーは印象派の絵画がたくさん置いてあってよかったです。建物も美術館らしいというか」
「確かにオルセーの建物は綺麗だよな。ルーブルの近代的な感じもいいが」

 行ったことのある美術館のことで莉桜と五十里は話が弾んでしまう。
「ニューヨークの近代美術館はショップも楽しいんですよねえ」
「これ本当に使うのか? というようなデザインも見るのは楽しいしな」

「私、フォトフレーム買いました。すごくおしゃれなの。そういえばあのフォトフレーム、まだしまってあるかも」
 買ったお土産が無駄になってももったいないので、莉桜は買って帰ってきたら基本的にすぐにパッキングは開けることにしていた。
 けれどそのフォトフレームは入れる写真がなくて、そのままになっていたのを思い出したのだ。
< 94 / 131 >

この作品をシェア

pagetop