大人になりたて男子は夢をみないはずだった
世良さんは説明してくれたけど、結局どうして誠が沙理さんに恋してしまったのかについては歯切れが悪かった。
世良さんの唯一の弱点は三神さんだと知っていたから、多分、それが原因なんだろうと勝手に解釈をした。
それにしても、大人になって初めて恋した相手が人妻って…。
尖ってるのは見た目だけ。
ピュアで一途な誠には重すぎるんじゃないかな。
先のことを想像すると、暗い顔した誠しか思い浮かばなかったけど。
僕にもチャンスがあるかも、と期待してる自分もいた。
変わったのは誠だけじゃなくて、三神さんも嘘みたいに優しくなっていた。
世良さんは、ただでさえイケメンなのに、さらに磨きがかかっていた。
歩いてるだけで周りの人間が振り返るくらいめちゃくちゃいい男になっていて、スクールの評判を上げるのに貢献していた。
僕が呼ばれたのは音楽面でのサポートがメインだった。
思っていたよりも生徒が多くて忙しい日々が始まったけど、みんなの歌声を聴くのは楽しかった。
おまけに、レッスン室にはグランドピアノがあって、凄く嬉しい。
発声や歌のレッスンで、 ほぼ僕しか触らないから好きに弾いていいと三神さんに言われて、久しぶりにピアノと向き合えた。
東京じゃなかなか触れなかった…いや、触ろうという気持ちになれなかったのだけど、ここでなら弾く気になれた。
それに、いつでも好き放題に弾いていいなんて。
もう、これだけでも、ずっとこっちに居てもいい気がした。
しばらく経った頃、不思議に思うことがあった。
定期的にピアノがピカピカになってる。
埃一つついてない。
誰か手入れをしているのかなとは思ったけど、ちょっと埃をはらったくらいじゃこうならない。
鍵盤やペダル、椅子まで綺麗に磨かれている。
メンテナンス要員でも雇ってるのかもしれないと思った。
ある夜、無性にピアノに触りたくなり、遅い時間だったけどレッスン室へ向かう。
ちょうど誰かが出てきたところで、人影が去っていくのが見えた。
ピアノがピカピカになってる。
鍵盤に触れると指に吸い付くように馴染む。
あの人がやってくれてるのか。
それもこんな夜に。
今度見かけたら声かけてみようと思った。
世良さんの唯一の弱点は三神さんだと知っていたから、多分、それが原因なんだろうと勝手に解釈をした。
それにしても、大人になって初めて恋した相手が人妻って…。
尖ってるのは見た目だけ。
ピュアで一途な誠には重すぎるんじゃないかな。
先のことを想像すると、暗い顔した誠しか思い浮かばなかったけど。
僕にもチャンスがあるかも、と期待してる自分もいた。
変わったのは誠だけじゃなくて、三神さんも嘘みたいに優しくなっていた。
世良さんは、ただでさえイケメンなのに、さらに磨きがかかっていた。
歩いてるだけで周りの人間が振り返るくらいめちゃくちゃいい男になっていて、スクールの評判を上げるのに貢献していた。
僕が呼ばれたのは音楽面でのサポートがメインだった。
思っていたよりも生徒が多くて忙しい日々が始まったけど、みんなの歌声を聴くのは楽しかった。
おまけに、レッスン室にはグランドピアノがあって、凄く嬉しい。
発声や歌のレッスンで、 ほぼ僕しか触らないから好きに弾いていいと三神さんに言われて、久しぶりにピアノと向き合えた。
東京じゃなかなか触れなかった…いや、触ろうという気持ちになれなかったのだけど、ここでなら弾く気になれた。
それに、いつでも好き放題に弾いていいなんて。
もう、これだけでも、ずっとこっちに居てもいい気がした。
しばらく経った頃、不思議に思うことがあった。
定期的にピアノがピカピカになってる。
埃一つついてない。
誰か手入れをしているのかなとは思ったけど、ちょっと埃をはらったくらいじゃこうならない。
鍵盤やペダル、椅子まで綺麗に磨かれている。
メンテナンス要員でも雇ってるのかもしれないと思った。
ある夜、無性にピアノに触りたくなり、遅い時間だったけどレッスン室へ向かう。
ちょうど誰かが出てきたところで、人影が去っていくのが見えた。
ピアノがピカピカになってる。
鍵盤に触れると指に吸い付くように馴染む。
あの人がやってくれてるのか。
それもこんな夜に。
今度見かけたら声かけてみようと思った。