嘘も愛して
いかにも私を抱き上げそうな体勢、やめ――
ひょいっと、私の心の叫びを無視して、彼は、空周は、王子さまのごとく私を、私を――
お姫様抱っこ!?
気絶しそう……。
軽々と持ち上げられ、背が高くて体格のいい彼の腕にすっぽりうずくまってしまった私は、対してそれほど背が小さいわけでもないのに、自分が小さくて非力な女の子であることを思い知らされてしまった。
「お、下ろして!」
こんな状況、私が耐えられない!
精一杯抗議する私を他所に、王子さまは有無を言わさない切れ長の目で一瞥しただけだった。
右足さえ痛くなかったら蹴りをお見舞いして逃げ出せたのに。
そう、抗っていないと、彼が本物の王子さまのように見えて、ときめいてしまいそうな自分がいて、それが一番、嫌だった。
もう、人を好きになりたくない。
私は力なく、彼の胸に顔を埋めた。
「……」